位牌の準備-いつまでに必要?どのように作る?意味や種類、選び方も紹介
2023年12月19日更新。
「位牌」には本位牌と白木位牌がありますが、一般的には仏壇に納める黒い位牌をイメージされる方が多いかと思います。
これを「本位牌(ほんいはい)」といいます。
本位牌は通常、葬儀後に遺族が準備しますが、何かと慌ただしく、思いのほか時間がありませんので、早めに着手した方が安心です。
本記事では、位牌を初めて手配する方でもわかるように、
◯位牌の意味や種類
◯本位牌の選び方
◯注文方法
等、詳しく説明していきます。
1.位牌とは
1-1位牌の意味
「位牌」の読み方は、「いはい」です。
供養のために、自宅の仏壇やお寺に安置する木製の札のことを言います。
位牌には、故人様の戒名、生前のお名前、命日、年齢が記載されています。
なお、神道では位牌に相当する「霊璽(れいじ)」がありますが、キリスト教には同様のものはありません。
1-2位牌の役割
位牌は、故人様の供養のため安置され、魂が宿るものと考えられています。
役割に応じて「白木位牌(しらきいはい)」「本位牌(ほんいはい)」があります。
<白木位牌>
葬儀を行うときや、四十九日までの間に遺骨と一緒に安置される白木でできた仮の位牌です。
この白木位牌は葬儀社がお寺に届けたり、お寺にある物を使用したりしますので、遺族が直接買うことはほぼありません。
僧侶が筆で戒名などを記す場合と、戒名紙という紙に戒名を記し、その紙を貼る場合があります。
<本位牌>
仏壇に安置するための位牌です。
四十九日法要の際に、僧侶に魂入れ(たましいいれ)をしていただき、本位牌が仏壇に納められます。
本記事ではこの本位牌の手配について説明を進めていきます。
1-3葬儀後に本位牌を準備する理由
1-2位牌の役割で紹介したとおり、白木位牌は仮の位牌です。
位牌は長くお祀りするものなので、変色や変形の可能性もある白木位牌のままではなく、本位牌に切り替える必要があります。
1-4四十九日法要までに本位牌を準備
葬儀後の慌ただしい中、四十九日法要の準備と並行して進めていくことになります。
本位牌は作成までに2週間程度かかることが多いので、法要の日程から逆算して早めに注文しておく必要があります。
もし間に合わない場合は9.よくある質問を参考にしてください。
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2.本位牌の準備の流れ
本位牌は下記の流れで準備します。
①菩提寺に相談する
②自宅の仏壇・先祖の位牌を確認する
③本位牌の内容を検討する
④本位牌を作る
⑤位牌の魂入れをしてもらう
⑥自宅の仏壇に安置する
次章から流れに沿って順に説明します。
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3.菩提寺に相談する
菩提寺と四十九日法要の打合せの際に、本位牌の手配についても併せて相談しましょう。
地域や菩提寺によっては、菩提寺に依頼して作る場合もあります。
遺族自身で手配する場合は、本位牌に記載する内容も確認します。
※菩提寺がない場合~葬儀を依頼した寺院もしくは葬儀社に相談するといいでしょう。
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4.自宅の仏壇・先祖の位牌を確認する
時間の無い中で準備をするため、参考にできるものがあると、安心・円滑に進められます。
全体像や文字部分など、写真を撮影しておくと検討・購入する際に役立ちます。
4-1サイズ
<総丈を参考にする>
既にある位牌の総丈(接地面からの高さ)を参考に決めます。
札丈が同じでも、台座の高さによって総高が異なるためです。
総丈の高さから逆算して札丈を決めるといいでしょう。
また、下記の点も考慮します。
◯仏壇(の位牌を安置するスペース)に収まるサイズにする。
※通常、上から二段目の左右のスペースが該当します。
◯御本尊より小さいサイズにする。
◯先祖の位牌と同等以下のサイズにする。
<注文は札丈のサイズで>
注文時は、サイズを「寸」(1寸=約3cm)もしくは「号」」で指定します。
この「寸」「号」で表記されるのは札丈であり、総丈ではないことに注意しましょう。
なお、カタログ等でサイズを総丈で記載されるときには「cm」で表示されることも多いようです。
4-2デザイン
先祖の位牌と一緒に安置するため、調和したものを選べるよう材質や加工方法、デザインを確認しておきます。
5-1本位牌の種類も参照してください。
4-3宗派・記載内容
宗派によって記載する内容が異なります。
確認しておくと、位牌の記載内容を指定する際に、安心して進められます。
①梵字・冠字
<梵字(ぼんじ)>
宗派の本尊を表します。
<冠字(かんむりじ)>
宗派を示す文字です。
「妙法」「法名」「空」など。
②戒名
寺院より授かった仏教徒としての名前です。
詳しくは、戒名とは|いつまでにどうやって付けてもらう?意味や構成、宗派ごとの違いも紹介を参照してください。
<補足1:「置き字」について>
白木位牌の戒名の下には「霊位」という置き字が記載されていることがあります。
本位牌では記さないか、「位」のみ記すことが一般的です。
置き字を記すかどうかは菩提寺にご確認ください。
もし戒名がない場合は、俗名の下に「之霊位」と入れることが一般的です。
<補足2:白木位牌のみに記載する文字>
葬儀の際に使用する白木位牌には、戒名の上に、「新帰元」「新円寂」といった文字がつくことがあります。
これは新しく仏になったことを表す文字で、本位牌には記載しません。
③俗名(ぞくみょう・ぞくめい)
生前の名前です。
④命日
お亡くなりになった日です。
⑤享年(きょうねん)
人が天から享けた(うけた)年齢です。
この世で修行した年数で示す「行年(ぎょうねん・こうねん)」で記載する場合もあります。
享年・行年のいずれを使うのか、年齢表記を数え年か満年齢にするか、などは白木位牌に書かれている内容に合わせるのが一般的です。不明な点などがあれば、戒名を授けていただいた寺院に確認するといいでしょう。
<補足:浄土真宗の場合>
基本的に位牌を作成しません。
亡くなったらすぐに成仏するため、故人様の魂が位牌に宿るとは考えられていないからです。
法名軸や過去帳という帳簿に記し、それを仏壇に納めます。
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5.本位牌の内容を検討する
5-1本位牌の種類
①札位牌
通常、仏壇の中で見る本位牌は「札位牌(ふだいはい)」といい、位牌一つに一人の戒名が書かれたものです。
札位牌の種類には、主に次の3種類があります。
<塗位牌(ぬりいはい)>
白木に漆を何度も塗り、金箔などで飾りをつけています。
漆を重ねた回数が多いほど高級で、劣化しにくくなっています。
位牌と聞いて一般的にイメージするのはこの塗位牌ではないでしょうか。
<唐木位牌(からきいはい)>
黒檀や紫檀といった高級木材に、透き漆という半透明の漆を重ねて塗った物で、木目の美しさを強調した位牌です。
<モダン位牌>
先の2つの伝統的な位牌とは異なる素材・製法で作成された位牌です。
木材だけでなく、石材・ガラス材・樹脂・陶器など様々な素材が使われ、形も多種多様です。
また、蒔絵が入ったり、ガラス製で透き通っていたりと、デザイン性を重視した物が多いです。
色合いも黒や茶だけでなく、青・白・赤など従来の位牌にはなかった色合いの物が作られています。
<補足1:位牌の台座に種類がある>
位牌の形状には、「春日型(かすががた)」「勝美型(かつみがた)」「角切葵(すみきりあおい)型」等があります。
<補足2:夫婦位牌(めおといはい)>
一つの位牌で一人の方を祀るのが基本ですが、夫婦位牌という形式で夫婦二人を祀ることもできます。
一つの札位牌に夫婦二人の戒名・命日を記します。
夫婦位牌を作るときには、亡くなられている人の名前を記し、存命の人の名前は記さず空白にしておきます。
②複数の方を祀る場合の位牌
仏壇の「位牌を安置するスペース」には限りがあるため、先祖の位牌の数が多くなると、置けなくなってしまいます。
一つの位牌に複数の方を祀る形として、回出位牌、過去帳があります。
<回出位牌(くりだしいはい)>
先祖の位牌をまとめて一つの位牌にする方法です。
位牌の中に戒名や命日を記した板を納める形式の位牌です。
中の板を命日の日付順に並べ、命日が過ぎたらその板を後ろに入れ、次に命日が近い板の名前が前面に出るようにする、という使い方をします。
もしくは、前面には「〇〇家先祖代々之霊」と書かれた板を入れておき、法要の時だけその板を前面に出すという使い方をする家庭もあります。
<過去帳>
戒名・命日・年齢・俗名などを記した帳簿で、仏壇に納めます。
5-2本位牌への文字入れ方法
文字入れの方法を指定します。
<「彫り」か「書き」>
◯「彫り」:文字を彫った後に色を入れます。
◯「書き」:文字を書き入れます。
<「機械」か「(人の)手作業」>
時間を要する手作業の方が料金も高くなるため、「機械彫り」「機械書き」が多くなっています。
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6.本位牌を作る
6-1依頼先
基本的には仏壇・仏具店に依頼し作ってもらいます。
仏壇・仏具店の実店舗のほか、インターネット通販サイトからも可能です。
<補足:初めて仏壇、位牌を購入する場合>
宗派のご本尊、仏具も必要になります。
相談しながらまとめて手配できますので、実店舗での購入が無難でしょう。
6-2依頼内容
販売店では所定のフォームが用意されていることが多いので、それに従い必要事項を記入します。
<位牌のサイズ>
4-1サイズで決めた札板のサイズを寸(号)で指定します。
<素材とデザイン>
販売店では、位牌の見本、カタログを用意しています。
その中から、希望する素材、加工方法、デザインを選択します。
<文字入れの字体(フォント)と加工方法>
◯字体:伝統的な書体、明朝体などから選びます。
◯文字入れの方法:「彫り」か「書き」、「機械」か「(人の)手作業」を指定します。
◯文字の色:金、白が多いです。
なお、文字入れの料金は位牌の価格に含む場合と別途必要な場合があります。
<記載事項・レイアウト>
■1名用の場合(例)
4-3宗派・記載内容で確認したことをもとに、位牌への記載内容とその位置を指定します。
①梵字・冠文字(あれば)
②戒名
③俗名
④命日
⑤年齢(享年もしくは行年)
白木位牌や先祖の位牌など参考にする位牌がある場合は、画像もあるといいでしょう。
6-3依頼時の注意点
納品までの所要期間を確認した上で、依頼しましょう。
<補足:インターネットで注文時の注意点>
◯旧字・外字の入力に注意
入力の仕方がわからない場合は、手書きか、文字がわかるものを画像で送付します。
◯販売店からの連絡を確認する
注文後、原稿の確認依頼があります。
修正の有無を速やかに返信しましょう。
位牌ができあがったら、依頼内容通りに仕上がっているかを確認し、四十九日法要を待ちます。
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7.位牌の魂入れをしてもらう
7-1魂入れ(開眼供養)について
四十九日には「魂入れ(たましいいれ)」あるいは「開眼供養(かいげんくよう)」と呼ばれる儀式が行われ、白木位牌から本位牌に魂を移します。
魂入れには、お布施をお渡しします。
四十九日法要のお布施と一緒にしてお渡しすることが多いです。
法事(法要)の準備は?意味や流れ、お供え物・お布施・服装・挨拶などを紹介もご参考ください。
<補足:仏壇の魂入れ>
自宅に仏壇がなく、新たに購入して位牌を納める場合は、仏壇の魂入れのお布施も準備します。
7-2魂入れのお布施の金額は菩提寺に相談
位牌の魂入れのみは、お布施の金額は1万〜5万円程度と言われていますが、菩提寺に相談しましょう。
7-3お布施の準備と渡し方
下記のように準備し、お渡しします。
<袋>
◯奉書紙か白封筒に入れます。奉書紙の場合はお金を半紙で包みます。
◯薄墨ではなく濃墨の筆か筆ペンで、「御布施」と表書きします。
<お金の入れ方>
◯お札の肖像画が袋の表面の上側に来るように入れます。
◯袱紗(ふくさ)か、切手盆(きってぼん)に乗せます。
※袱紗:お金が入った金封を渡すときに使う小さな風呂敷
※切手盆:金品を渡すときに使用する小さなお盆
<お渡しするタイミング>
法要が始まる前か後のご挨拶時がいいでしょう。
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8.宗派別戒名の書き方
詳しくは、戒名とは|いつまでにどうやって付けてもらう?意味や構成、宗派ごとの違いも紹介を参照してください。
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9.よくある質問
Q:四十九日法要までに間に合わない場合はどうしたらいいですか?
A:菩提寺(四十九日法要をお願いする寺院)に相談しましょう。
一周忌など次の法要の際に魂入れを行っていただくこともできるようです。
Q:位牌を自宅に安置できない(仏壇を置く場所がない)場合はどうしたらよいですか?
A:お寺に預ける「寺位牌(てらいはい)」という方法があります。
位牌の詳細、お預けする際のお布施などは菩提寺にご相談の上、位牌を手配します。
Q:かなり前の先祖の位牌があるのですが、処分してもいいのでしょうか?
A:基本的には三十三回忌や五十回忌などで「弔い上げ(とむらいあげ)」といって、個人としての供養を終了します。
弔い上げされた方は「〇〇家先祖代々」として先祖位牌を作成して供養する方法と、回出位牌にするという方法があります。
いずれかの位牌へ魂を移すことができます。
菩提寺には、魂の移し替えと古い札位牌のお焚き上げをお願いします。
位牌に記載されていた戒名や俗名等の情報は、過去帳に記すといいでしょう。
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10.まとめ:本位牌は、四十九日法要に間に合うよう早めに手配しましょう
ここまで、位牌の意味、本位牌の手配方法などについてお話してきました。
<ポイント>
◯四十九日を境に替えるのが望ましい。
◯仏壇に納める「本位牌」は遺族が用意する。
◯菩提寺に四十九日法要の相談の際に位牌のことも併せて確認する。
◯先祖の位牌を参考にするとよい。
◯購入先は、仏壇・仏具店の店舗、インターネット通販など。
○白木位牌から本位牌に入れ替える際は、魂入れを行ってもらう。
◯間に合わない場合は菩提寺に相談する。
本位牌の準備も四十九日法要も滞りなく済ませ、忌明け後は故人様を仏壇内で長く大切にお祀りできるようにしましょう。